雪がちらつく畑のなかでブラックオリンピアの枯れ枝を剪定した。
こんな寒い日にもかかわらず、高畑さんと熊辻くんが手伝ってくれた。
時折鳥の声が聞こえる以外、なんの音もない。
静寂のなかで、黙々とぶどうと向き合う。
ここまで枯れ込んでいるな。
あ、この枝はもう手放そうとしているね。
ぶどうと話ができるようになる。
昔、こんな日に父に畑に連れてこられ、この作業をした事がある。
私は、やり方がよくわからなかった、というよりわかろうとしていなかった。
ただでさえ寒くて面白くない作業に、分からん、分からんと呟きながら嫌々やっていた。
そんな私に父は
「よし、寒いから帰ろう」
と、作業を切り上げた。
今なら分かる。
父が共有したかった感覚。
これよな。もうあんたは居ないけど。