四年前、やり損なって大不作だったとき、それまで毎年買ってくださっていたお客様に、今年は自信を持ってお届けできないのでとお断りした。
そのお客様は、シャインではく、BKでなく、ひたすらにブラックオリンピアのファン。
何度か、シャインなどの品種を提案したことがあるが、一途にブラックオリンピア贔屓。
そんなお客様の依頼をお断りすることになってしまった。
断腸の思い。しかし、仕方がなかった。
父が続けてきたことを断ち切ってしまったことが残念でならなかった。
少し前、同じ町でぶどうと梨を直売している農家のところにお邪魔した時のこと。
「しましまくんがぶどうやり損なったことがあったやろ?あの時ね、しましまぶどう園から地方発送するぶどうがないからってうちに来てくれたお客さんがいてね。それから毎年うちからぶどうをご友人やお知り合いに送っていただいてたんよ。」
そうか。
あれから、あのお客さん、お見えにならなくなったな。
こちらにいらしていたのか。
「でもね、今年うちは結実が上手くいかなくて単為結果ばかりになってさ。今度はうちでは出荷できないから、しましまぶどう園を勧めたのよ。」
え。
そうだったの?
「もともとしましまくんとこのお客様だからね。」
ありがとうございます!
農家の友達の気持ちがありがたかった。
商売敵なんだし、今年断ったとしても、うちを再び紹介する必要はない。
お客様を最優先にあえてうちの話をしてくれたのだ。
敗者復活戦に臨む気分でぶどうをちぎり、箱に詰めた。
お喜びいただけるだろうか?
今年、自信を持ってお勧めできるブラックオリンピアができた。
それをまた、ブラックオリンピアが大好きなあのお客様へお届けできることになった。
父の思いをなんとか繋ぐことができた気がした。
絶やさぬこと。
切らさぬこと。
失ってしまった大切なものに3年の歳月をかけて巡り会えた。
こんな嬉しいことはない。
肝に銘じておくよ。