チャーミング。
彼はそう表現した。
イチゴやラズベリー系の芳香。
ワインの香りには3種類あり、第一から第三アロマに分類される。
第一アロマはぶどう、第二は発酵、そして第三が熟成に由来する。
タバラソダチは、出来立てのほやほや。
香りは第一、第二アロマで構成される。
イチゴやラズベリーなどのような香りと甘さ、即ち果実味は、マスカットベリーAと隠し味のヤマ・ソービニオンからきている。
その香りと果実味を彼は「チャーミング」と言った。
「シチュエーションを選ばず、幼馴染と飲むワインですね」
幼馴染か。ベリーAというぶどうは、私が子供の頃、川崎町でも広く栽培されていて、店頭に並べていると「これ、懐かしいですね」と買っていかれるお客様が多い。
私も食べると子供の頃のことを思い出すぶどう。
幼馴染に会う。そんな感じなのかもね。
「ぶどうが栽培された地域の空気や風、土、水のやうな風土の一つの表現としてワインが作られるんですよ。」
と、仁階堂くん。
そうか。身土不二だね。
芋焼酎「たばらそだち」プロジェクトを始めたのも、精神は身土不二に他ならない。
今回のワインもまた、身土不二だ。
ぶどう栽培を父から引き継いで4年。
父はぶどうの声を聞いていたが、まだまだ私には聞こえないことの方が多い。
しかし、今回のワインはぶどうの声だな。
親父、あなたが聞いていない声を俺は聞くことができたよ。
少しだけ、あんたに近づけたんかな。