水が出ない。
ハウスにビニールを掛けて三週間。
ハウスの中は基本雨水は入らない。
日光で温められた室内の空気は、ハウス内を乾燥へと促す。
即ち、砂漠になっていく。
ハウス栽培とは乾燥との闘いなのだ。
水はハウスから100mほどのところにある素掘りの池からポンプで送水しスプリンクラーで散布する。
ぶどうは発芽の時にはびちょびちょに灌水し、温度を上げてやる。
しかし。
二週間前からポンプが作動しない。
これまで、ちょっと調子が悪いこともあったが、何とか動いていた。
だが、今回は違った。
モーターは回っているのだが、水が上がらない。
呼水はしっかりすぎるほど入れているのに、だ。
これはやばい。
前にもこの事を書いたが、その後の検討虚しく、ポンプは言うこと聞いてくれない。
井戸の水は、前回高畑さんがスピードスプレイヤーで水やりしてくれた時に減ったっきり水位が戻らなかった。
やっぱり、今冬あまりにも雨が少なかったからだ。
乾燥していて地下水位も低いのだな。
あ。
そうか。
池の水位も相当低い。
毎年、結構上の方まで水があるのに、今年は下〜の方に少し水があるだけだ。
吸い上げる水が低い位置にあるなら、それだけポンプに負荷がかかる。
ポンプ自体はもう30年使っているからいつ壊れてもおかしくない。
ポンプがへたっている上に、水位が低くてそれに耐えられない可能性がある。
ならば‼️
池の水を増やすべ。
叔父からポンプを借りてきて、隣の溝を堰き止め、そこに溜まった水を池に流し込む。
これまた高畑さんに手伝ってもらい、土嚢を積んで水を溜めた。
この溝は水源があるわけではなく、道路排水が流れているだけのもの。
それでも昨日一昨日降った雨でそれなりの流れがある。
1時間で3t。
10時間で30tか。
池は5m×20mのサイズ。
10時間注水して30センチ水位上昇‼️
やってみるしかない。
水がなければ、ぶどうは枯れる。
先週から、嫌な懸念ばかりする自分に気づいた。
ダメかもしれない。
少々のことではへこたれない私が怯えていた。
四年前に一度、園内のぶどう2/3を高温で枯らしたことがある。
あの時も叩きのめされ、そこから這い上がってやっとここまで復活させた。
やっとだ。
あの時の悪夢が私を押し潰そうとしている。
でも、諦めるわけにはいかない。
負けるか。
くそう‼️
雨が降る前にハウスの屋根を少し巻き上げた。
中に雨水が入るようにした事で、園内は少し湿潤な状態になっていた。
例の溝の横にタンクを据え、そこに水をストックした。
井戸が乾涸びてもこの水が使える。
「二日にいっぺんくらいなら、俺がやってやるよ」
と、高畑さん。
みんなが支えてくれる。
負けるかよ、くそう‼️