4月に逝ってしまった幼馴染、たかしくんのお姉さんと彼を凌いだ。
たかしくんには彼が好きだった芋焼酎。
三人で乾杯した。
姉さんの明美ちゃんとは、子供の頃から話したりしたことはあるのだが、大人になって話したのはこれが初めてだ。
たかしくんに留まらず、いろんな話をした。
二人の生きてきた道で埋まっていなかったピースが揃っていく。
へー、そうだったんだ。
たかしくんと姉さんは8つ違いで、姉さんが夏休みなんかで大学から帰ってくると、たかしくんが玄関まで走ってきて、姉さんに抱きついて喜んでいたと聞いた。
大人のたかしくんは、どちらかというと寡黙でハードボイルド系。
子供の時は無邪気だったよねと二人で話した。
前にも書いたが、私とたかしくんは高校一年の時に喧嘩をした。
それからの2年間全く口をきかなかった。
一緒に入った山岳部も私が追い出した。
たかしくんにも問題はあったが、幼馴染で兄弟のように一緒に育った彼を排除してしまったのか。
部室でタバコを吸ったとかそんなこと。
お前、それはいけないから止めろ。
そう言ってフォローすればよかった。
葬儀の時に、彼が大病を乗り越えたあと、山の生命力に惹かれ山に向かった話を聞いた。
山が好きだったんだな。
そんな彼を追い出した。
その時のことを姉さんに打ち明けた。
どうしてそんなことをしたんだろう。
彼は周りを惹きつける何かを持っていた。
幼少の私もそんなところが好きでいつもついて回った。
高校になって、彼の周りにはいつもたくさんの友達に囲まれていた。
そのことに妬いていたのか。
彼に憧れても彼のようにはなれない自分に失望したのか。
彼が好きだったからに他ならない。
いくらそのことを思っても、もう彼はいない。
明後日から彼の初盆会だ。
俺が作ったぶどうをお前に供えるからな。
こんなだけどさ、そこから俺を見ていてくれよ。