ぶどう園日記

職人

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病院に着いたのが5時過ぎだった。

診察を終え、点滴をしてもらっているうちに病院の診察時間は終わっていた。

1/5くらい残っている点滴の残量を見ながら先生が話しかけてくれた。

「川崎町に勤務していた頃からお父さんのぶどうが美味しくてですね。」

5年前、父からぶどう栽培を引き継いだことを話した。

最初は父と一緒に畑で過ごせたらいいと思っていたのだが、やっているうちに面白くなって、今年から専業農家になった。お客様に「美味しい」と言ってもらえるのが嬉しくてたまらない。

そう話すと、

「私たちも同じだと思うんです。患者さんに『良くなりました』と言ってもらえると嬉しいし、自分の見立てが間違っていなかったということを確信できる。間違いもあるかもしれないけど、それがさらに散歩や改善に繋がっていくんだと思うんですよね。」

あ、父は75を過ぎても「来年こそは!」と言っていました。

「職人とはそういうものだと思います。もうこれでいいと思った瞬間に止まってしまう。私たちも同じです。例えば内視鏡の扱いでも、勉強して上手く扱えるようになって、さらに経験を積んでいくと見えるものが変わってくる。お父さんのお気持ちよく分かりますよ。」

そうおっしゃる先生も御歳75。

「ぶどうの声を聞いています」をぶどう園のテーマにしました。

ぶどうと会話をするように栽培していた父に近づきたいという思いからです。

「そんな作り手が作るものって、食べたら伝わりますからね。」

私も先生に診ていただいて良かったなと思いました。

熱中症にはなったのだが、ぶどうのおかげで今日もう嬉しいことが起きたな。

ありがたいことだ。

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